事業主にとって社会保険料の納付は大きな負担となっているのが現状です。しかし、社会保険の加入手続きを行っていない場合、日本年金機構からの調査・指導が行われ、社会保険への加入を免れることはできません。今回は、社会保険に加入している事業主とその被保険者が、社会保険料を抑える方法と、抑えることで生じるデメリットについても考えてみます。
目次
1. 社会保険料の決定のしくみ(標準報酬月額について)
2. 社会保険料を抑える方法
3. 社会保険料を抑えるデメリット
4. まとめ
まず、従業員を雇い入れる際に、ある一定の条件を満たす場合には、原則、事業主側は社会保険に加入しなければなりません。社会保険料は基本的には労使折半(事業主と従業員とで半分ずつ負担すること)です。ただし、加入先が協会けんぽではなく、各事業種ごとの健康保険組合である場合にはその限りではありません。
毎月の社会保険料は、4月~6月の3ヶ月間の給与の平均額を、保険料額表と照らし合わせて決定します(標準報酬月額)。この保険料額は、9月~翌年8月までの各月に適用されます。
したがって、以下のような方法により社会保険料を節約することが可能です。
・「4月~6月」の残業時間を減らす
・昇進を7月以降に実施
・企業型確定拠出年金への加入 -掛け金は給与支給額を押し下げる効果があるため、標準月額報酬を下げることが可能です
・給与、賞与を減らし、将来の退職金を増やす -退職金には社会保険料がかかりません
・退職日を月末の前日にする -資格喪失月の社会保険料は控除されません。退職日の翌日が資格喪失日となるため、例えば6月29日退職→6月30日資格喪失=6月の社会保険料が発生しないため、1ヶ月分負担が減ります。
・健康保険組合の加入を検討 -協会けんぽよりも健康保険料が安くなる場合があります 参照URL:健康保険組合連合会けんぽれん「健保組合への加入について」
https://www.kenporen.com/join-establishment/kumiai_kanyu/
次に、この社会保険料を抑えることで、将来的に起こりうるデメリットについても確認しておきましょう。
将来受け取ることのできる厚生年金、遺族厚生年金は、在職中に支給されていた給与に基づき計算されます。また、万一の怪我や病気、出産等で休職しなければならない場合にもらえる「傷病手当金」や「出産手当金」も同様に計算されます。 よって先述の通り、給与支給額の平均額(報酬額)が少なければ、その分これらのもらえる額も当然少なくなるということも、併せて知っておくと良いでしょう。
経営者からすると社会保険料を抑えることで、会社の利益向上に直結するため、社会保険料の節約方法を検討するケースは少なくありません。 ただし適法な節約方法であったとしても、従業員の将来利益に影響を与える場合もあります。 従業員が不満を持たないよう、きちんと制度を理解し、双方に不利益が生じないものから取り組んでいきましょう。不安な場合は社労士等の専門家に相談しましょう。