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2022.02.04
【経理コラム】電子帳簿保存法 改正について

近年は環境への配慮、書類のデータでのやり取りによりオフィスでのペーパーレス化がだいぶ進んできたのではないでしょうか。しかしながら経理財務業務では多くの書類は原則紙に印刷して長期間に渡って保管することが義務付けられてきました。それが電子帳簿保存法の改正(2022年1月施行)により、電子的に保存する際に求められていた様々なハードルが大きく引き下げられます。書庫管理費や印刷コストの削減にも繋がる保管書類のデジタル化を推進していくために、この度の改正のポイントを確認していきましょう。

電子帳簿保存法の概要

原則帳簿書類は紙での保存が義務付けられていますが、一定の要件を満たすことで電子データにて保存することを可能とすることと、電子取引情報の保存義務などを定めたものになります。

大きく以下の3つに区分されます。

  • 電子帳簿等保存

電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存。

  • スキャナ保存

紙で受領・作成した書類を画像データで保存。

  • 電子取引

電子的に授受した取引情報をデータで保存。

これらに共通して2022年1月から適用になる改正についてみていきましょう。

2.改正の概要

事前承認の廃止

これまで事前に所轄税務署長の承認が必要でしたが、不要になりいつからでもはじめられるようになります。

〇保存要件の緩和

厳しい規定が多く要件を満たすことが困難だった保存についての規定が大きく緩和されました。

訂正又は削除ができない、或いは、訂正又は削除の履歴が残るシステムで保存される場合はタイムスタンプ付与は不要となり、タイムスタンプ付与期間も遅滞なくとされていた3日以内から最長約2か月以内に延長されます。

また検索機能の検索条件も「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目でよくなり、スキャナ保存における第三者による原本との照合や定期的な検査などの煩雑な事務処理要件が廃止されることになります。

〇電子取引データ保存の厳格化

一方で電子データについてそのデータの出力書面の保存が容認されてきましたが、書面保存ができなくなり必ずデータで保存しなければならなくなります。

〇罰則規定

要件が緩和されましたが、改ざん等により不正計算がされている場合の重加算税を10%加重される罰則規定が設けられました。

〇優遇措置

色々と要件が緩和されましたが改正前と同等の規定に基づいて電子保存されている場合は事前に届出書の提出があれば、優良な電子帳簿の記載事項に関し生じた申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されることになりました。

また個人事業主の場合、電子帳簿保存またはe-Taxによる申告(電子申告)を行うと65万円の青色申告特別控除を受けられます。

改正で事前の承認が不要になったこと、ゆるくなったところと引き締められたところがあることが分かりました。では、3つの区分ごとに具体的にどう保存していけばよいのかみていきましょう。

3.電子帳簿等保存について

自社で会計ソフト等を利用し一貫してコンピュータで作成した帳簿書類をデータで保存していくことを進めるものです。

改正点は事前承認の廃止、保存要件の緩和、優遇措置で、新設された条件として税務調査において調査官から帳簿書類のダウンロードの求めがある場合に応じることができるようにしていることが加えられました。

ご使用中の会計ソフトが電子帳簿保存法の要件を満たしているかはJIIMA(公益財団法人日本文書情報マネジメント協会)による要件適合性の確認を受けたJIIMA認証マークでご確認していただくこともできます。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/11.htm

4.スキャナ保存について

取引相手から紙で受け取った請求書や領収書等や、自社で作成した請求書や領収書の写しや控等をスキャンしてデータ保存していく場合です。

改正は事前承認の廃止、保存要件の緩和、受領者の自署が不要になった点、罰則の新設です。

定期的な検査などの適正事務処理の要件が廃止になったことで、紙原本を即時廃棄することが可能になったのは大きな変更でしょう。(入力期間経過した場合、プリンタの最大出力より大きい書類の読み取りをした場合を除きます。)一定の解像度等の規定はありますが、スマホやデジカメで撮影したものも認められています。また、2か月の入力期間内に取引年月日、取引金額、取引先の3項目によって検索できるように保存しておけば良いことになります。

要件緩和の一方でスキャナ保存において隠蔽又は仮装された事実があった場合には申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されるという罰則規定が設けられました。

5.電子取引について

2022年1月以降(令和4年度税制大綱でやむを得ない事情があると認められる場合は、2023年12月31日まで猶予が認められることになりました。)に請求書・領収書・契約書・見積書などに関する情報を電子的に授受した場合は、その電子データを保存することが必須となります。申告所得税・法人税に関して帳簿書類の保存義務のある全ての方が対象となっていまして、罰則規定もありますので、みなさまに必ずご確認いただきたい内容です。

電子取引については書面保存が廃止され、必ず要件を満たした形式でデータ保存をしなければなりません。例えば電子メールに請求書等がPDFで添付された(メール本文に見積や取引情報が記載されているものも含む)場合はメール又は添付されたファイルをサーバー等に保存しておく必要があります。通販サイトの領収書をダウンロードできる場合や、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用したり、クラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合、従業員がスマホ等のアプリを利用して経費の立替をする場合も該当し、クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマホアプリの決済データ等もデータで保存することが義務付けられます。売上高が1000万円を超える事業者は保存するときも検索機能の確保が求められますので、取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できるようにしておきましょう。

タイムスタンプの付与はなかなか難しいですが、訂正・削除できない(または訂正や削除を行った履歴が残る)EDIシステムやクラウドシステムなどにて授受し保存することでも良しとされています。これも難しい事業者では訂正や削除の防止に関する事務処理の社内規定を定め、その規定に沿った運用と規定を備え付けておくことで改正に備えることができます。

関係書類等の備付けや見読可能性の確保も規定されていますので、システム関係書類(概要書やマニュアル等)を備え付け、パソコンやディスプレイ、プリンタに、整然とした形式で明瞭な状態に速やかに出力できるようにしておきましょう。

まとめ

電子帳簿等保存とスキャナ保存については任意ではありますが、電子取引についてはデータ保存が強制されるもので、ほとんどのみなさまに影響があると思われます。

既にクラウドやサーバーに帳簿関係書類を多く保管されている場合はフォルダを整理しファイル名を規則的に検索要件に沿うよう変更したり、社内のワークフローを明言化し従業員にも保存方法のルールを徹底するよう指導していくことで、電子帳簿保存法に対応していくことが可能かもしれません。

オフィスに積まれた大量の書類整理にお困りの方やデジタル化をより推進していきたい方は、会計業務のため経理資料をお預かりするとともに適切な保存についてもご提案させていただきます。せひ弊社にご相談ください。

 

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